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第五十八話 充希は社長夫人 1

Author: 柳アトム
last update Last Updated: 2025-09-26 03:30:38

 私がサインした離婚届は受理されていない?

 宗司そうじさんが離婚届を破棄した?

 なぜ? どうして?

充希みつき夫人、これをどうぞ」

 秘書さんは私に封筒に入った一通の書類を差し出す。

 私が中を確認すると、そこには私がサインをした離婚届が入っていた。

「どうしてこれを秘書さんが……?」

 私は震える手で離婚届を受け取りながら、秘書さんに尋ねた。

「宗司社長は、その書類を持たれ、時折、取り出しては何かを考え、深いため息をつくとまたしまわれるといった日々を数日間、繰り返していました。

 私は、これがなんの書類であるかはわかりませんでしたが、重要な書類であることはすぐに理解できました。

 しかし、そこで疑問が生じました。

 何故なら、宗司社長は決断が早く、どんなに重要な事案でも、即断即決でご判断をされていたからです。

 そんな宗司社長が、これ程までに判断を迷われるなんて……。

 私は、この書類がなんであるか、とても興味を覚えました。

 そんなある日のことです。

 もう何度目かわかりませんが、また、宗司社長がこの書類を取り出して、深く思い悩んでおられました。

 しかし、ついに宗司社長は決断をされました。

 この書類をゴミ箱に叩きつけるように捨てられたのです。

 私はいけないことだとは思いつつ、ゴミ箱を処分する名目で書類を拾い、そして中身を拝見したのです。

 この書類がなんであるかわかった私は、宗司社長の判断に喜びました。

 ───宗司社長! よくぞこの書類を破棄してくれました!と。

 そしてこの書類は跡形もなく消し去るべきだと思いました。

 しかし、その消し去り方は、私がシュレッダーにかけて処分したり、焼却炉で燃やしたりする方法ではいけません。この書類は、充希夫人にお渡しして、充希夫人がご自身で破棄しなければならない。

 そうでなければ……充希夫人が自らの意思で破棄しなければ、離婚するという考えや意思を撤回することができない。本当の意味でこの書類はなくならない。私はそう思い、この書類を懐に忍ばせていたのです」

 私は自分がサインをしてしまった離婚届を改めて確認する。

 そこには確かに私の名前がサインされていた。

 このサインをしたのは間違いなく私だった。

 でも、今、改めて見返してみると、これが自分のサインとは思
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